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空間芸術研究所/vectorfield architects
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六日町の町屋
LPガスと灯油の販売、大手クリーンサービスのフランチャイズ店を営んでいる家族の、店舗(事務所)と住宅である。1階が事務所および倉庫と住宅の玄関、2、3階が専ら住宅となっている。

この界隈では毎年5月8日から10日の3日間、四百年の伝統をもつ薬師祭植木市が車両を通行止めにして行われる。前面道路はその開催場所となる主要な通りであり、周囲には日用品を取り扱う店舗併用住宅等が建ち並んでいる。

沿道一帯が、都市計画による道路拡幅工事のために、一定期間内に市の補償を受けて、セットバックして建て替えることを要請されていた。また、国史跡の国分寺薬師堂が通りに面してあるため、景観審議を受けて設計を進める必要があった。

施主と設計打合せした際、その当初住んでいた併用住宅でも採用されていた、北側道路から南側の荷捌き所(物置)まで通じる、歩車兼用の通路を1階に設けることという条件が付された。それは家業を営む上で欠かせない機能であるので維持してほしいということであった。その上、ただでさえ間口がそれほど広いとは言えない敷地の中で、階段に加え、新たにホームエレベータという垂直動線を設けることが要望として挙げられた。

敷地は、南北に細長い形である。敷地の大半が近隣商業地域に属しており、東西は隣地境界近くまで建物が建つ可能性もあり、南北面からの採光だけでは、建物の中央部分が風通しや採光の点で問題を抱える可能性があった。

施主要望にあった通路を従来とほぼ同じ位置にとり、その中央にあたる部分に、空まで抜けた中庭を設けた。このことで、建物全体が呼吸できるようにした。この中庭に面してエレベーターホールを設け、階段室から2階3階のリビング等への通路を兼ねる構成とした。

階段室は、中庭と同様に、この建物の中にあるもう一つの縦の抜けである。この階段室内はRCの架構としては、床のない完全な3層吹き抜け空間となっており、そこに、丸鋼による支持材と木による踏板で構成された、階段(一部通路)が回っている。この階段室を除けば、この建物においては、通過動線のためだけの空間は存在せず、主目的の定まった空間同士が直接結ばれる、流動的できわめてコンパクトな構成となっている。(階段室も階段型ギャラリーのように絵画の展示などをしてくれればなおよい。)階段室の3階部分はテラスに対して大きく開かれており、その開口部から自然光が階下に注ぎ込む。

東西境界に面する外壁は内外とも断熱塗装を施し、その間にある壁は主に打ち放し仕上げとした。最上階屋根は断熱防水を施したうえで、直天(打ち放し天井)としている。建物の外周部には断熱を施したうえで、内部にあるRC壁は蓄熱層としても働くように、素地仕上げとした。

都市におけるさまざまな制約の中で、経済性も考慮したうえで、いかに自由で快適でふくらみのある空間が実現できるかを模索した。設計を進めるうちに、いつの間にか縦の抜けと横の抜けのある近世の町屋のような空間構成になっていることに気づいた。また、歴史的町並みの景観審議を経て、格子をつけた意匠を採用したこともあり、RC造の近代建築でありながら町屋のような雰囲気をもつ建物になった。

職住近接の古くて新しい形として、建物の隅々まで太陽の光が注ぎ込み風が通り抜けるこの「町屋」が、地域の歴史と呼応しながら、この家族の暮らしと生業をより豊かなものとしてくれることを願っている。(矢野英裕)

Data

店舗兼住宅設計 | 矢野英裕

種別 | 新築

構造 | 鉄筋コンクリート

予算 |

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