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佐久間徹設計事務所
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軽井沢の家
軽井沢に建つ2世帯で暮らすための住宅である。軽井沢と聞いて、まず別荘のようなもの想像してしまったが、この計画では本邸、それも2世帯が根付いて暮らすための家をつくることが目的であった。この地は、もともとご夫婦ともにゆかりがあったのと、北海道にお住まいだったご両親が同居するにも相応しい、ということで選ばれている。敷地は、別荘地と地元の住宅地の中間あたりに位置づけられ、自然に囲まれながらも、ほどよい利便性も持ち合わせている。そのため、よくも悪くも、南側と北側の隣地には割と近くに建物の計画が予定されていた(もちろん都市部の隣地とは異なるのだが)。

はじめに意識したことは、自然との関係について特別な操作をしすぎないように注意することであった。別荘であれば非日常を楽しむことが目的でありえるし、都市部の住宅であれば、稀薄になりやすい自然とのつながりを求めることも理解しやすい。ただ、日常の生活が自然に囲まれている今回のような計画では、普通に暮らすこと、に重きを置くべきだと考えた。
まず、南側に大きな庭をとることを避けた。これは南隣地の建物を感じさせないため。また、あまり大きな開口部に頼らないように計画した。断熱性能のこともあるが、周囲とは程よく距離感をとることや室内を居心地よくコントロールするためだ。具体的には、建物を東西南北、十字形に配置し、くぼみの部分が外部に対して開くように計画している。この配置が、ゆとりのある敷地を活かしさまざまな外部との関係をつくるきっかけとなり、必要とする内部の空間にメリハリをもたらした。
2世帯が同居することについては、場所によりゆとりある寸法をもちいて、また、動線に回遊性をもたせ、さらに、視線の抜けを多数もうけるよう配慮した。それぞれが一人になれる居場所を確保して、また、同じ空間にいても様々な居場所があるように工夫している。ただそれは、単世帯の住宅の設計でも考えていることで、特別なことではなかった。完全に分離する2世帯住宅が多いなか(私の近年の経験では)、建主たちの描く家族像が自然とそうさせたのだろう。
完成後に訪れると、引越からまだ日が浅いのにも関わらず、落ち着いたひと家族の暮らしが見て取れ、2世帯の距離感という意味でも素直に腑に落ちた。むしろ、世帯で分けるより、大人4人と子供数人で暮らす家族、といったほうがしっくりくる感じだ。今後、この距離感によって、良いことも悪いことも起こっていくだろうと思うが、この当初の感覚を持ち続け、暮らして下されば幸いである。
Data

一般住宅設計 | 佐久間 徹

種別 | 新築

構造 | 木造

予算 | 3500万

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