[ 作品解説 ]
ちょうどSOHOという言葉が、一般的に広まりつつあるころ我々の事務所もアトリエと自宅が一緒だった。そのアトリエにやってきた30代後半の夫婦は、約束した時間を随分前から扉の向こう側で待ちかまえていたかのようにぴったりに訪れた。どのクライアントも同じだが、初めて会うこのときにどれだけ自分の事について語れるか。ほとんどの場合、いくつかの簡単な漠然とした質問に対する回答から話をふくらませていく。我々は、この最初に交わされるこの会話の中から新しく始める計画の重要なカギをいくつか見つけ出す作業をこの時点で始めている。そのやり取りを書きとめた紙が5枚目に差し掛かったとき、最初の言葉を口にしてから3時間が経過していた。なかなか初対面の人に自分のことを3時間も語れるモノではない。慎重に言葉を選びながら、話す内容は、これまで体験してきたことやこれから体験したいことについて具体的であったり漠然としていたり様々。聞き手を飽きさせることなく3時間を少し過ぎたところで一段落した・・・。